講 師:別府 諸兄 先生
(聖マリアンナ医科大学整形外科学講座代表 教授)
○演 題 名:「難治性テニス肘に対する鏡視下手術の適応と術式について」
上腕骨外側上顆炎は、伸筋腱起始部の障害、とくに短橈側手根伸筋(ECRB)の腱付着部症(enthesopathy)とするのが一般的であるが、診断においては外側側副靭帯・輪状靱帯の障害、さらには滑膜炎、滑膜ヒダなどの存在で、外側上顆炎症状を呈するものがあり、鑑別に難渋する場合もある。上腕骨外側上顆炎は、保存療法が奏功するのが一般的であるが、なかには難治例も存在する。その難治症例に対する関節鏡視下手術は、ECRB 起始部と滑膜ヒダへの処置、つまり関節外病変と関節内病変を同時に低侵襲で行うことが可能である。関節鏡下手術の適応は、保存療法に抵抗し、罹病期間期間が6 カ月以上である。2005 ~2012 年まで経験した難治性症例は36 例、38 肘で、術後成績は、JOA score で術前平均26 点で、術後は平均73 点であった。その適応、術式について簡単に紹介する。
- 【学歴・職歴】
- 昭和50年 3月 東京慈恵会医科大学卒業
- 昭和56年 6月 米国Louisville Hand Surgery Associates 留学
- 昭和60年 1月 聖マリアンナ医科大学整形外科学教室講師
- 平成 2年 5月 日本整形外科学会American Orthopedic Association Traveling Fellowship
- 平成 6年 4月 同 大学整形外科学教室助教授
- 平成 7年10月 日本私学振興財団海外派遣米国Mayo Clinic留学
- 平成11年 4月 同 大学整形外科学教室教授
- 平成12年 5月 米国AOSSM& WPOA Sports Medicine Traveling Fellowship
- 平成17年 4月 同 大学整形外科学講座代表教授
- 平成19年 5月 同 大学付属病院副院長
- 平成19年11月 Kleinert and Kutz Visiting Professorship
in Hand and Microsurgery
- 平成20年11月 University of California Irvine Visiting Professorship
- 【学会】
- 日本整形外科学会 理事(2009.5~現在)
- 日本股関節研究振興財団 理事長(2011.4~現在)
- 日本手外科学会 理事(1997.6~2002.3, 2006.4~現在)
- 第55回日本手外科学会学術集会会長(2012.4)
- 日本マイクロサージャリー学会 理事長(2007.10~2009.10)
- 日本肘関節学会 副理事長(2010.2~現在)
- 第36回日本整形外科スポーツ医学会学術集会会長(2010.9)
- 【表彰】
- 2009年 日本テニス協会功労賞受賞
- 2011年 日本体育協会公認スポーツ指導者受賞
講 師:大森 みかよ 様
(聖マリアンナ医科大学病院 リハビリテーション部 主幹)
○演 題 名:「難治性テニス肘(上腕骨外側上顆炎)に対する手術後のリハビリテーション」
テニス肘は,テニス競技者の30~50%に発生する肘関節外側の疼痛を伴う伸筋腱起始部の障害とするのが一般的であります。30歳代後半から50歳代にかけて好発し,主にラケットの不適切な使用やプレースタイルが関与しているといわれています。多くは保存治療で改善が認められますが,10%程度は関節外病変に加え滑膜ひだ障害を有する難治性テニス肘であります。
当院整形外科ではその治療法として低侵襲の鏡視下手術を行っています。術後のリハビリテー ションは,術直後~1週は術後の炎症を鎮静化させる段階,術後1週~2週は創の治癒を促進させる段階,術後2週以降のスポーツ復帰を目指す段階,術後3カ月以降のスポーツ復帰及び再発を予防する段階に分けられます。今回はメディカルコンプリメントとして,難治性テニス肘に対する手術後のリハビリテーションについて,それぞれの段階における注意点や具体的方法について概説いたします。再発予防のプログラムは発症予防にもつながりますので,日常のトレーニングに生かしていただければと思います。
- 【学歴・職歴】
- 1986年 3月 国立療養所箱根病院附属リハビリテーション学院卒業
- 1986年 4月 聖マリアンナ医科大学病院 リハビリテーション部入職
- 【その他】
- 日本作業療法士協会 専門作業療法士(手外科)
- 日本ハンドセラピィ学会 認定ハンドセラピスト
- 日本ハンドセラピィ学会 理事
講 師:Dr. ホルスト・ギュンツェル (Dr.paed.Horst Guentzel)
(公益財団法人吉田記念テニス研修センター テクニカルディレクター)
- 【資格】
- テニスコーチ・ライセンス/DTB-ドイツテニス連盟
- 重量挙げコーチ・ライセンス/BVDG-ドイツ重量挙げ連盟
- 【略歴】
- 1993年に来日し、ストレングスコーチとして日本のトップ選手を指導(陸上、プロ野球、大相撲、競輪、スピードスケートなど)。
- 2000年より公益財団法人吉田記念テニス研修センターのフィットネスディレクターとして着任し、競技者のフィットネスプログラム全般を取り仕切る。
- 2005年より同センターのテクニカルディレクターに着任し、強化プログラムの最高責任者となる。
- 2002年に車いすテニス用フィットネステストを作成し、9年間のデータを2011年にドイツのボンで行われたVISTAカンファレンス(3年に1度行われる国際パラリンピック協会主催の国際学会)で発表した。現在このフィットネステストは2011年より日本障害者スポーツ協会のトレーナー認定講習会のカリキュラムに取り入れられている。
- また、2004年に車いすテニスのフィットネストレーニングマニュアルをDVDにまとめた。このトレーニングマニュアルは日本車いすテニス選手の躍進に大きく貢献し、現在27カ国で活用されている。
2005年より国際車いすテニス協会(IWTA)のコーチ委員会のメンバーを務める。
講 師:安見 拓也 様
(公益財団法人 吉田記念テニス研修センター 理事)
- 【資格】
- 柔道整復師
- (公財)日本体育協会公認アスレティックトレーナー
- 【学歴・職歴】
- 茨城大学教育学部小学校教員養成課程保健体育科卒業
- 筑波大学大学院修士課程体育研究科健康教育学修了 「スポーツ医学研究室」
- 1996年にTTCのフルタイムのトレーナーとして着任。主にプロ選手・ジュニア選手・車いすテニス選手のコンディショニング、スポーツケア、アスレティックリハビリテーション、フィットネストレーニングなどを担当
- 2008年ワールドチームカップイタリア大会日本代表チームトレーナー
- 2008年北京パラリンピック日本代表チームトレーナー
- 2009年アジアユースパラゲームス東京大会オフィシャルトレーナー
- 2010年アジアパラリンピック日本代表チームトレーナー
- 2012年ロンドンパラリンピック日本代表チームトレーナー
- 【学会発表・その他】
- 2008年 テニス国際医学会STMSにて発表
- 2011年 日本障害者スポーツ協会公認スポーツトレーナー認定講習会講師
○演 題 名:「国枝慎吾選手 パラリンピック2連覇までのプロセス」
日本の車いすテニスはこの10年で大きな躍進を遂げ、現在世界ランキング20位以内に男子4名、女子2名、クワドクラス2名がランクインしています。日本の車いすテニス選手の特徴としては技術力・戦術力のみならずチェアワークの巧みさがあげられます。今回のセミナーでは車いすテニスの概要と躍進の理由を紹介します。
また、2012年ロンドンパラリンピックで国枝慎吾選手が見事2連覇を達成するという偉業を成し遂げました。しかし、そこに至る道のりは決して平坦なものではありませんでした。特に2011年9月に右肘の上腕骨外側上顆炎を悪化させてから手術・リハビリを経て競技ステージに復帰するまでは不安と混乱の連続でした。しかし、ゴールセッティング、スケジューリング、チームワークのすべてが効果的に機能することで最高の結果を得ることができました。この貴重な成功例を皆さんに知って頂きたいと思います。